BIG ROMANTIC INTERVIEW : 関山雄太(映像ディレクター・デザイナー)
初の来日ツアーで快進撃を続ける台湾のバンドdeca joins、長きに渡りバンドの映像制作に関わる関山雄太さんにお話を伺いました。
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deca joins
・自己紹介をお願いいたします。
デザインと映像の仕事をしています。フリーで10年くらい、LAFHという会社を立ち上げて4年目になります。
・関山さんの活動歴について教えてください。
もともとデザインとか映像が好きで、地元の名古屋から東京にきて、DJをしたり、バンドシーンで遊んでいる中で、CDのデザインとかホームページの制作の依頼を受けるようになっていきました。そしてちょうどその頃インディーズのバンドもYoutubeに映像をどんどんあげるようになっていってたので、映像にも関わるようになりました。
その後「TOKYO ACOUSTIC SESSION」というサイトを立ち上げて、そこでインディーズのバンドの映像作品を制作する中でカメラや編集を覚えていきました。
・「TOKYO ACOUSTIC SESSION」はどのくらいやってるんですか?
最初はThe KeysとKONCOSに出てもらったんですがこれが10年前くらいですね。
最近はあまりやれてないんですけどね。一時期は週一回更新するくらい頻繁にやってました。自分が作りたいからやるという感じで、商業的なものではなかったですね。ただ、この活動を通して撮影と編集の技術を磨くことができました。
・台湾のバンドも結構出てますよね?
そうですね今までに台湾のバンドも最初は確かManic Sheep、それからFour Pens、洪申豪、SKIPSKIPBENBEN、deca joins、DSPSに出演していただきました。
・台湾のインディーズが日本に紹介され始めた初期の頃からやってますもんね
そうですね。当時の台湾インディーファンは観てくれてたのかなと思います。
最近だと、「TAIPEI ACOUSTIC SESSION」という名前で台北で撮影をしたものを2年前くらいからやってます。きっかけは、金曲獎にお呼ばれして台北行くことになったので、せっかく行くのなら何か作りたいな、ということで始めました。今はコロナで少し中断してますね。
・今や台湾で広く知られる日本の映像作家のうちの1人の関山さんですが、台湾との関わりのきっかけはなんだったのでしょうか?
「TOKYO ACOUSTIC SESSION」を初めたくらいでだんだんと仕事が軌道にのって、バンドだとミツメとかDYGLに帯同して色んなところに行ったりとか、ファッションブランドに帯同してニューヨークに行ったりしてたんですけど、その時に台湾でAIRHEAD RECORDS主催のPOP! POP! FESTというイベントがあってDYGL、Wallflower、Post Modern Teamが出演したんです。それでDYGLチームに着いて行ったんですけど、現地で自分の泊まる宿がなくて困ってたらイベントの主催のAIRHEAD RECORDS代表のYU君が家に泊めてくれて、それでYU君と仲良くなって、色々良くしてくれて、街の感じも好きだし一気に台湾にハマっていきました。
2014年 POP! POP! FEST
・イベントはいかがでした?
台北駅近くの芸術村のような場所とかライブハウスとか場所を変えて連日開催されたイベントで、それがとても新鮮で面白かったです。
・当時でもDIYでこういったイベントが開催されるのは画期的だったと思います。透明雑誌とかのパンクに近いシーンではDIYでライブハウス以外の色んな場所でイベントをやる流れは台北でもありましたが、インディポップ的なジャンルでこういったイベントはほとんどなく、イベントタイトルからもそこらへんは意識してたのかなと思います。
そうでしたか!当時は何もよくわかってなかったんですが、あのイベントに行けたのは良かったなと今振り返って思いますね。
YU君と仲良くなってからずっと交流は続いていて、ある時「Go Slow」のMV制作を頼まれて、それが結果的に2019年の金曲獎のMV部門にノミネートすることになりました。これが自分が一番初めに作った台湾のMVなんですが、ノミネートがきっかけになって多くのバンドからMV制作のオファーをいただくようになりました。
・「Go Slow」の撮影は日本でされたのでしょうか?
はい、日本で自由に作ってくれという依頼で、キャスティングもお任せだったので、自分で台湾でどういうものが受けるのかというのを考えて、東京らしさとか、街の様子とかなるべく入れたほうがいいなと思って進めていきました。
・曲は先に聴いた状態で取り掛かったのでしょうか?
そうですね、ただ最初のラフの音源をもらった段階では完成形のような浮遊感があまりなかったりして、撮影の直前くらいにもらった最終的なミックスでだいぶイメージが変わりましたね。
歌詞に出てくる「瞳」から、太陽と月を瞳に見立てながら、月日の経過と、二人の感情を表すというアイデアを思いつきました。
これが日本以外のバンドの作品をつくるのが初めてだったので、すごく不思議な体験でしたね。作品に込めた想いが海を渡って外国から発信されるというのもそうですし、細かいニュアンスとか言葉にしてない主人公2人の感情とかが、そういうものが、演技とか撮り方とかで伝わるんだということがとにかく不思議な感覚でした。
キャスティングに関しては、ミツメのドラムの洋次郎氏と、今まで何度かMVにも出てもらってる瀬戸かほさんの2人のカップルです。
・金曲獎はいかがでしたか?
はじめはYUからこういうのがあるから台北に来てね、と言われて、その時はなにもわからなかったんですけど、だんだんどういう状況なのかわかってきて、レッドカーペットがあるとか、スーツを持っていかなきゃとか。とにかく貴重な体験をさせていただきました。
・会場で何か次の仕事に繋がるような出会いとかありましたか?
いや、なかったですね笑。色んなオファーをもらうのはその後でしたね。会場に座って、自分の作った「Go Slow」のMVが巨大なスクリーンで流れたりして、とにかく凄い体験だったんですが、あのMV自体はとても低予算で作っていて、スタッフも自分と妻と、あとヘアメイクさんだけだったんです。車の運転も洋次郎氏にやってもらって、出演兼運転手だったんですね。そのくらい低予算のものだったんですが、こういう作品もこうやってノミネートしてくれて、ちゃんと作品自体を見てくれてるんだな、ということに感銘を受けました。
「Go Slow」制作の打ち合わせの時にYUとは三部作にしたいと話していて、この2人のキャラクターのその先も描けたらいいねと話してたんですが、恐らく金曲ノミネートが決まったおかげで三部作が実現することになったと思います。
・三部作全部日本撮影ですか?
はい。ちょうど2019年後半にdeca joinsの来日公演があって、その時にメンバーと海に撮影にいきました。なので2つ目の作品「浴室」はメンバーが出てますね。撮影は遠足のような雰囲気ですごく楽しかったです。
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三部作
Go Slow
浴室(2019 Reprise)
午夜的消亡
■関山さんの手掛けた台湾MV■
Four Pensのもそうですが、それぞれ自分にとって今までにないチャレンジができたのがとてもありがたいと思っています。吳青峰のは依頼してくれた方自身がこの曲の歌詞を書いている方だったんですが、金曲獎の審査員だったんです。金曲獎の時に「Go Slow」を観てくれて依頼してくれました。 いい流れで金曲獎の後も台湾のMVを日本で撮影して完成させるというやり方を続けて来れていますね。そういえば「Go Slow」もコロナ以前でしたけどリモートで完成させたものでした。
・今後はどうですか?
こんなに一時期にたくさんのMVを作らせてもらえる機会はなかなかなかったので有り難かったですね。今後は音楽以外のことももっとやっていきたい気持ちがあります。自分の世界観を他の分野でも表現したらどうなるか興味があります。
デザインも映像もやってますけど、作風とか雰囲気は一貫して同じモノは作れなくて、そういう意味では自分はアーティストではなくデザイナー気質だと思っています。依頼をいただいてから作品の中で、何が必要なのか、どういう表現が大切なのかというのを毎回アーティストと一緒に作っていくのが大切なんだと思っています。
今まで作ってきた台湾のMVを見返しても、依頼をきっかけにいろんな作風にトライしてきたので日本で作ってきたMVとはまた全然違うモノになっていますね。今後もこうやって自分の幅を広げていけたらと思います。
・最初のきっかけがあって、それをモノにした関山さん自身のチャレンジもあって、そしてそのチャレンジを継続してきてこそ、全てがつながってきてるんですよね
POP! POP! FESTにdeca joinsのメンバーもバンドの名義がdeca joinsになる前ですが、遊びに来てたみたいで、彼らもあの場所にいたんだなぁと思うと感慨深いですね。
・ありがとうございました!
関山雄太(せきやまゆうた)/ 映像ディレクター・デザイナー
1985年生まれ。ミツメ、deca joins、KONCOS、Keishi Tanakta、LEARNERS、奇妙礼太郎、Special Favorite Music、The Songbards、go!go!vanillasなど多くのアーティストのアートディレクション・デザイン・映像作品などを手がける。deca joins「Go Slow」がGolden Melody Award 2019 ミュージックビデオ賞にノミネート。